大隠朝市

ハルココロ
「大隠朝市」
本当に悟りに達した隠者は、山中にこもっているのではなく、かえってひとの集まる場所にすんでいること。「大隠は朝市に帰る」の略。
出典:王康きょ・反招陰詩「小隠ハ稜藪ニ隠レ、大隠ハ朝市ニ帰ル」




来月、こんな本が出るそうだ。
Cordula Rau, Why do Architects Wear Black?, Springer.

なぜ建築家は黒を着るのか…?という命題。2001年から、この質問を世界各国の著名建築家に投げかけていったという。7年におよぶアンケート結果をまとめたのがこの一冊。編者は建築家でジャーナリストのドイツ女性。美人。


最初に質問した有名どころは烏の巣の巨匠・ジャック・ヘルツォークミュンヘンの展覧会が大成功、ホクホク上機嫌のところをつかまえ、芝生の上で語り合い、最後に彼なりの「黒」の答えをメモに書き記してくれたという。ちなみに結局答えてくれなかったのはノーマン・フォスターなど。回答者には日本人建築家も入っているみたいです。

百戦錬磨の建築家がジャーナリストにナイーブな答えを返すこともなかろう、どうせカッコつけたか構えたこと言うに違いない、とか、しかし、質問者のテクニックにより、思わぬ本音を引き出せることも事実なので。衣服という卑近な自己表現の手段を通じて、表現行為がお仕事である建築家とはナニか?…と問いかけるのは悪くない。

それはともかく。なぜ建築家は黒を着るのか。まじめに考えれば、むしろこの続編としての、黒を着ない建築家、もしくは昔は着てたけど今は着ない建築家に「なぜ黒を着ないのですか?」と聞くことも必要だろう。世の中では「建築家は黒に立て襟」のイメージがいまも通用しているのであって、その中で、黒をあえて着ないことのイメージ戦略、もしくは個人的な思い、などなど。黒と色彩のかなでる正反の答えがぶつかりあい、着衣の色がデザインなりその作業に及ぼす影響、もしくは職業意識に対する、より本質的な応えにたどりつくのかな、とか。

黒ではないけど、パリのたしかシャイヨー宮で行われたTEAM10建築展で(違っていたらゴメンナサイ)、たしかチームXの集まりか何かに参加した若き丹下健三氏、コルビュジエ先生張りの蝶ネクタイにツイードジャケット…で、オシャレなイタリア人とかの間でかなりださかった。スタンダードはいつもコル。

大隠朝市の心で言えば、黒を着てない立派な建築家はたくさんいる、という感じでしょうか。沢田研二のような建築家がいてもよいと思う。

http://d.hatena.ne.jp/haarhurryparis/20081023