臨機応変

ハルココロ
臨機応変
その場のなりゆきに応じて、適切な手段をとること。
出典:南史



計画性がないと思われがちだけどそんなこともない。計画しても計画通りにコトが運ばないだけだ。予定調和はつまらない…とライプニッツに言ってやりたい気分である。


そこで臨機応変臨機応変に見えてもモナドの秩序なんだぜ、と切り替えされようが、そこは近代人。神だのみはやめて意思をつらぬこうとモスクを訪れた。


ここにいたったモナド的わけがある。肩こりである…温暖な朝の陽だまりの中、早起きして図書カンヅメしていると、先来の肩こりがついに頂点に達した。痛みを通り越して気持ち悪くなってきた。ただでさえ念仏地獄の環境で、拭い去れないストレスとか、大人だから、お気楽生活に見えても、結構あったりするのだ。今日が峠、越えるその道もまたけわしく。目の前がぼんやりし、立ち上がり、峠をむりやり越え、しかし気づいたら、そのままメトロに乗り込み、モスクの前に立っていた。ハマムに呼び寄せられたのである。神のお告げかしら。色々とあったしね。


ちなみにハマムは中東の伝統的大衆浴場。パリのモスクでは、サウナを中心に、あかすり、マッサージなどのサービスがある。日本から見ると、パリに中東…?てな感じかもだが、フランスは植民地元宗主国であったりして、イスラムのかたが多い。そもそもヨーロッパとアフリカも中東そもそも地理的、宗教的、文化的に非常に近接した関係にある。ハマムは銭湯というよりハーレム的な雰囲気がなきにしもあらず、でもないか。イスラム文化は魅力的な絵画のモチーフであったし、このチョッピリいやらしい雰囲気がディレッタントな心をそそるのだろう。ともかく乾燥しお風呂嫌い?なフランスに水文化を持ち込んでくれた有難い施設である。


ちなみにパリのモスクはレストランの中にハマムが併設されている。宗教施設に公衆浴場…?と、日本人的にはちょっと不思議な感じはするが。国内のムスリムの雇用の場としても成立しているのだろう、とか。それでも、脱衣場で行き会ったパリジェンヌ的オバアチャン、ここはね何時間でもいられるから他に比べていいのよぉ、他は二時間制限だからね、と言っていたので、まあお得なのだろう。


とはいえ、人生初ハマム。去年から懸案だったけれど、ハマムの作法が分からないからなあ…と及び腰であった。しかしだ。人間は極限に立たされると、本能へいやおうなく向き合わされる。そして、いやがおうにも宇宙の声、自然の流れに耳を傾けるのである。つまり臨機応変力はモナド的な神がかりなのである。勢いがなければ始まらない。


なぜか気づいたら手ぶらでハマム内部に導かれてハーレム風?タイルが張られた浴場で、湧き上がる蒸気の中、汗いっぱいかいていた。専用グローブで垢すりされて、全身に香油をぬりこめられた…すべてが終わりベッドから顔を上げると、ヒジョーに仏頂面だったマッサージのオバチャンたちが慈母の笑顔を並べ、「あんた凝ってるねえ、商売してるのかい?こんな堅いの初めてだよ…」…と肩ポンポン。職業意識をヒジョーにそそる肩だったようだ。肩こりなんてアジア人の専売特許だからね…。白くたちこめる蒸気の中で、ホトケ・マダムたちの分厚い皮膚が緩慢に揺れるのをみるにつけ、まあ肩こりなど繊細な病はヒジョーにアジア的現象と思う。


屋外のカフェでおまけのミントティーをすすり、体中ポカポカ感だし血の巡りはよいし久々の幸せ感〜…と思っていたら、肩こりでごまかされていた胃がきしんだ。臨機応変の果実、生活リズムを変えよう。ちなみに、ここのハマムは準備万端でいくべきで、ご想像にお任せというところで、次回は万全の体制でのぞもうかなと決意する。


http://d.hatena.ne.jp/haarhurryparis/20081013