「建築と写真の現在 2.畠山直哉 「写真家と建築」」

「建築と写真の現在 2.畠山直哉 「写真家と建築」」@TN Probe品川インターシティ


TN Probe主催の写真/建築のレクチャー・シリーズの第2弾。TN Probe大林組の運営するギャラリーで、かつては六本木の鳥居坂で独立運営され提起的に建築展が開催されていた。学生時代は大学前のバス停から六本木行きに乗りこんで足を運んでいたけれど、それも今は昔。現在は品川のインターシティ大林組本社屋でレクチャーが行われ出版物が刊行されているよう。ちなみに前回は多木浩二氏によるパリを中心とする写真史だった。


畠山直哉」といえば『Under Construction』(せんだいメディアテークの撮下ろし写真集)、端正な建築/都市写真を撮る写真家…のイメージが強い。話題は日本における「建築写真」と欧米における「Architectural photography」をめぐる射程範囲の違いから始まり、建築雑誌に掲載されるような「記録」媒体、展示価値をもつ「作品」としての建築写真をとりまく現在的な状況について展開していった。


畠山氏が指摘する通り、建築分野において「写真」に代表される映像メディアへの関心はひとつのトレンドだろう。今回のTNプローブの企画が「建築」の文脈で「写真」をテーマ化することで一定の集客を集めることが可能である事実からも、ここ90年代から現在にかけて「建築」のメディアにおいてジャンル横断的なパースペクティブから「映像」への文化的関心が醸成されてきた結果であることは確かだと思う。畠山氏は自作を分析的に紹介しつつ、「建築」としての「カメラ(camera)」と写真の相関性や、写真が現実の都市や建築に与える影響を熱く明晰に語りあげた。さらにカナダのCanadian Center of Architecture (CCA)にアーカイブされた2万点もの建築・都市写真を紹介しつつ模型写真の可能性に言及した。


右脳人間の要約力では話のすべてはレポートしきれないけど、ともかく畠山氏の熱っぽい言葉は刺激的で、ひさびさに「講演会」の場で感動してしまった。作品と通じる明晰で美的な完璧主義者の2時間は記録/記憶に残る圧倒的な名講演だったと思う。次回のレクチャーの際に今回の講演録が販売され、さらに全講演の終了後にシリーズをまとめた書籍が販売される予定らしいので、ご興味のあるかたはチェックしてみてください。


ちなみに映像研究においても「都市表象」はそこそこ受けがよいみたいである。けれど映画から都市へのアプローチは一過性のブームで終るのではないか…と実感的に危惧しないでもない。映像分野において都市表象を研究する方法論が確立しているとは言いがたい状況で、平面的な視点のみで現実の都市空間にどこまでふみこみ両者の地平を結びつけられるのか、なかなか難しいだろうな…などと愚痴を言ってみたくもなる…。ともかくいわゆる「都市表象」と「映像」に関しては都市や建築の分野からの長期的なアタックを期待するので、次回のレクチャーもなかなか楽しみなのであった。