アントニオーニの映画

AntonioniNetに[Films: 映画]を追加しました。


http://www.harchives.net/antonioni/antonioni_films.html




これまで日本で劇場公開されたアントニオーニの長編映画が網羅されています(フィルムセンター含む)。『街の恋』や最新作『エロス』(トホホ邦題)など他監督と共同のオムニバス映画も含まれています。まだデザインやリンク等不十分な部分が多いのですが、その辺りは少しずつ改善していけたらよいなと思っています。


アントニオーニの長編映画は日本では全作品が劇場公開(映画祭など含め)されています。そのものはフェリーニみたいな万人受けする超人気者ならともかく、売れない「芸術映画」の代名詞的な、なおかつ60年代に活躍した「イタリア」映画としては快挙です…と思っていたら、幻の発禁映画『中国』が抜けてますね。あとで追加します。この作品、パリのシネマテークで見ましたが、とにかくダラダラやたらと長いです。


日本における「イタリア映画」。イタリアにおいて戦後直後の「ネオレアリズモ」と60年代前半から半ばまでのフェリーニヴィスコンティの全盛期のフィルムは外貨をかせげる有力な輸出産品のひとつでした。なのでこの時代、日本には現在に比べれば数多いイタリア映画が流入しました。しかしイタリア国内が政治、経済的に下降線をたどり不安定化した70年代以降、輸出に耐えうるフィルムが生まれにくくなり、パッタリと低調路線、数年前から東京で年1回の映画祭が開催されるくらいの状況で今日に至っています。なのでフランス映画が戦後から現在まで日本にコンスタントに輸入され毎年華々しく「フランス映画祭」を開催し有名映画人の来日で話題を集める状況や戦略の有無では差があります。国家の国際的、経済的、文化的影響力とも絡む気がしますが、ともかく現在はマイナーなイタリア映画の状況からすれば信じられない程、60年代におけるイタリア映画は「メジャー」に近かったようです。その中でアントニオーニ映画を同時代に楽しんだ層の多くはいわゆる若い知識層で、フランス発の実存主義などになんだか知的で小難しい雰囲気がカッコイイっぽい…としびれて思わず飛びついたようです。同時代に若者だった世代が、あれはアントニオーニは若気の至り…と青春時代をこそばゆく語るゆえんかもしれません。


ちなみに1953年の『街の恋』L'amore in citta`はかつては『巷の恋』という邦題がつけられていましたがいつのまにか変わってしまいました。これはかつてのネオレアリズモ系の作家が集まって制作された作品で、アントニオーニは「自殺未遂」という作品を提供しています。実際の自殺未遂経験者へのインタビューをまとめた作品です。これ、本当に俳優じゃないのだろうか…と思わせるナチュラルな「演技」。


制作の経緯として、「昔からの知人に頼まれて参加した」「みんなで打ち合わせしてたら、テーマの割り振りで「オマエは「自殺」をやれよ…」と言われたからそうした」…などと渋々?ニュアンスのことを語っています。というより、仲間から「自殺」でやれ!…と言われたアントニオーニのポジションってどうなんだろう。とはいえ、その後、『女ともだち』『さすらい』『赤い砂漠』など自殺がモチーフになる作品が制作されているので、この作品の経験は無駄ではなかったのだろう…ということです。ちなみにオムニバス中では、作品の出来としてはフェリーニの短編がいちばんまとまっているかなと思います。かつてはVHSが売られていたけどまだDVD化されていないようです。地味だし。


それと日本では『情事』もDVD化されていないようです。アントニオーニ映画の代表作のひとつ、かつ、映画史的にも重要な作品だと思うのですが。日本ではかつてはVHSとLDがありましたがこれも希少な存在でした。現在ビデオ屋さんで見かけることはほとんどありません(数年前の渋谷TSUTAYAにはあった気もする)。権利関係のためでしょうか。


日本以外の国では入手困難な作品ではありません。アメリカのAmazon.comでは普通にラインナップされています。日本で見るにはPC再生のみの可能性もありますが。


今後は資料的に、初期短編映画のリストや助監督、脚本担当一覧表も加えていこうかと思っています。