「ブルーノ・タウト展 アルプス建築から桂離宮へ」★★★★*

ブルーノ・タウト展 アルプス建築から桂離宮へ」ワタリウム(渋谷・外苑前)
【評価】4.25 (キュレーショ:4.0 作品:4.5)


お正月から続いていた井戸掘り作業もようやく水源の響きが聴こえはじめ…と思いこむことにして、今週末は町に出ることにする。気づいたら1ヶ月も展覧会を訪れていない。井戸にもぐりこむと無線電波も届かないのである。


そう決めたとたんに人生初めての花粉症に見舞われたようで鼻ものどもおかしい。にきびもボツボツでてきて、こうして今日、わたしの中で何かが失われていった。嗚呼。喪失した何かを探しに、昔のウルトラマン・サングラスをかけてシュワッチと外へ出た。


それはともかく、外苑前・ワタリウムの「ブルーノ・タウト展」。ワタリウムをはじめて訪れたのは95年末の「ロドチェンコの実験室」。この時の展示があまりに面白くて、大学帰りに展覧会に3度ほど通い(確か会期中何度でも入れる制度だった気がする)八束はじめさんの講演会まで行った記憶がある…。記憶は鮮明なのに時間は残酷。それはともかく、フラーやシュタイナーなどワタリウムが手がけてきた建築展のクオリティの高さは東京で随一とも思う(駅から遠いのが辛いけど)。


今回の展示の感想は、「参りました…」につきる。圧倒的な情報量と展示空間の濃密さにうちのめされ、わたしごときが「評価」できるシロモノではないわ…と卑屈な気分においやられる。磯崎新(実行委員長)と隈研吾(会場デザイン)の大御所コンビのパワーだろう。


ドイツ人のタウトさん、30年代初めのロシアでの活動を境にナチス政府ににらまれたらしく(このあたりの細かい情報を知りたい)、晩年近くに日本に渡りトルコで客死する。展示室は2階から4階にわたり集合住宅やグラスハウスなど初期の作品から、来日後の工芸作品まで、幅広い展示がなされている。磯崎スタイルの膨大な情報量の解説パネルが無数に設置され、ガラスケースには初見のドローイングや長い和紙に墨で書いたタウト直筆の手紙(英語)など、日本近代建築が好きならヒトなら垂涎もの(であろう)資料が並べられている。タまたタウト生前の最後の建築作品である日向邸の一部再現など、2年の日本滞在で日本語も日本文化にもずいぶんと親しまれたようである。タウトの墨絵が、タッチなどなかなかのできばえで、これは面白い。


タウトといえば「桂離宮」のイメージしかなかったけれど、今回の展示はタウトのドイツ時代から晩年の地トルコでの活動全般をたどる俯瞰的な内容となっている。俯瞰といっても偵察衛星レベル?の展示は感動的であり、なおかつ「キュレーション」「展示」の意味を考え直させられた。