「球体写真二元論:細江英公の世界展」★★★★

「球体写真二元論:細江英公の世界展」東京都写真美術館★★★★
【評価】作品4 展示4


恵比寿ガーデンプレイスの写真展に行く。前回は駅から人気の少ない最短アクセス(ショップの入れ替わりの多い地帯)で行ったので、今度は王道、明るいガーデンプレイス内を通り抜けた。裏口?からコッソリ忍び込むよりは華やかな感じだけど、ビルのエントランス部分から暗い細道を奥まった美術館まで到るには心理的な距離感が残る…ので、この道のりにナニかインパクトがほしい感じがした。「美術体験」は美術館の中だけにあるのではない。そこまで到る道のりもまた美術体験に組みこまれるのである。


写真展は面白かった。細江英公は主に60年代から活躍した写真家。デビュー写真集『おとこと女』のファッション写真?(付け睫にウィッグの短足ニホンジンの全身タイツ)から始まり、マッチョ気取りの三島由紀夫薔薇刑」や現在にいたる大野一雄など。


しかしなんと言っても圧巻は土方巽の写真。舞踏の「祖」として神格化された土方だけど、たぶん日本中、世界中で土方巽が舞台で踊る姿をナマで見たヒトなどそうとう限られると思う。大抵のヒトが知っている「土方巽」は写真の中で飛び跳ねるその人の姿だろう。そうした「土方巽」の共通イメージが細江英公の写真「鎌鼬かまいたち)」により形づくられたのだという単純な事実を知るだけで、表現メディアとしての「写真」の威力を実感する。「土方巽」は写真の中に生きている。


ところで普段着の土方巽は美青年である。知らなかった。埴谷雄高宅を訪れる大野一雄の何気ないスーツの後姿もダンディーだった。ダンスしてない男性ダンサーはカッコイイ。