「The Wonder Box−ユニヴァーシティ・ミュージアム合同展」★★★*

「The Wonder Box−ユニヴァーシティ・ミュージアム合同展−」
【評価】3.75(作品4.0 展示3.5)
「芸大コレクション展斎藤佳三の軌跡−大正・昭和の総合芸術の試み−」
【評価】4.0(作品4.0 展示4.0)

http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm


週末の上野、公園のテント街横をとおりぬけて広々と整備された道路に出る。整然とした道端をうめつくす銀杏の落葉をやわらかくふみしめると、明治の開国とともに国家資本が投下された街の歴史が聞こえてくる。日本の建築史や美術史などに触れるたびにひしひしと感じる「芸大」の特権性、それに較べれば慶應の三田の丘はずいぶんと軽やかな気風だ。

それはともかく、かの立山まんだら苑の六角鬼丈先生設計による芸大美術館。現在は2つの展覧会が行われていた。

まずは企画展である「The Wonder Box−ユニヴァーシティ・ミュージアム合同展−」。全国25の大学や研究機関の代表的な収集物を東京藝術大学大学美術館に集めるという芸大企画の展覧会である。鳥の剥製や縄文・弥生の人骨など、おもわずオエっ…とくる収集品の数々。それぞれの「作品」の保存状態もよく美しい。そしてナニヨリも、全国の大学の片隅においやられた(?)保管品のネットワークをつくりあげ、芸大という光のあたる場所に一挙に集合させて、その価値を再認識さえ、科学資料のもつモノとしての美しさが浮き上がらせる。コンセプトはとても面白いと思う。ただ、出品数が少ないために、展示空間全体としてやや迫力に欠ける印象はいなめない。パリのリュクサンブール公園横の鉱物博物館は、ただひたすら?、収集したミネラルたちをガラスケースに並べ立てているけれど、技術者がルーペをのぞく傍らでウロチョロ石を眺めるという圧倒的な面白さがあった。

斎藤佳三(1887-1955)の資料を集めた「芸大コレクション展斎藤佳三の軌跡−大正・昭和の総合芸術の試み−」は、豊富な作品・資料と展示物への研究に裏うちされた展示解説が、豊かな展示空間を実現していた。斎藤佳三は芸大音楽科から図案科へ入りなおし、ベルリン留学を経てドイツ表現主義を日本に紹介した。石井漠の舞台美術や衣装デザインに関わったようなので、ダンス関係の方々にはなおさら貴重な展示なのだろうと思う。バウハウスを思い出させる斎藤の構成的なデザインはいかにもドイツっぽい。あらゆる芸術を構成、統合することで成立する「総合芸術」は虚構の現実としての舞台、そして現実の現実としての生活の中に存在する。自宅の設計までをみずから手がける斎藤の人生に対する愛着がかいまみせる幸せな展示である。