「「東京都写真美術館」の場所」★★★*

東京都写真美術館の立地と建物」★★★*
【評価】3.75(立地:4.0/建物:3.5)

都立の美術館は現在、東京都美術館東京都庭園美術館東京都現代美術館、東京都江戸東京博物館江戸東京たてもの園東京都写真美術館、とある。その中で、写真美術館はコンスタントに質の良い常設展、展覧会を行っているので、どの展覧会をみても充足して帰途につける好きな美術館。しかし、「写真」というメディアに特化する専門性とこじんまりした規模で、他の都立美術館に比べ比較的地味な印象がある。

地味な印象を残す理由のひとつは、他の都立美術館が独立した敷地と建築をもつのと違い、写真美術館は、オフィスビル内に組み込まれていることだろう。ここで東京列島改造論者としては、「恵比寿ガーデンプレイス」という好立地を生かしてリニューアルしたらどうなるだろう…とよけいなことを考える。というのも、恵比寿界隈で生活する人やガーデンプレイスに遊びにくる人々が、せっかくのオモシロい展覧会をみのがしているとしたらもったいないからだ。


恵比寿ガーデンプレイスサッポロホールディングスグループが展開する不動産事業の総称である。1985年に渋谷区一帯の都市化で工場は閉鎖され、1991年に土地の再開発事業が開始。1994年に「恵比寿ガーデンプレイス」が竣工し現在に至る。写真美術館はこのガーデンプレイスのオープンとともに誕生した。渋谷や麻布、広尾に隣接する好立地だが、一方でガーデンプレイスを少し外れると、恵比寿の昔からの下町風情がいまもところどころに残っている。


写真美術館までのアクセスを確かめよう。
JR恵比寿駅東口からスカイウォークを通り抜け、ガーデンプレイスめざして交差点をわたり、建物裏手のベンチなどならぶ道を真っ直ぐ進んだ奥、左側に位置する。山手線沿線の商業施設内という立地は、文化施設としてはめぐまれているといえるだろう。とはいえ、この美術館の最短アクセスが三越のある表通りから隔たった場所に隠れてしまっていることが問題である。殺風景な道の奥に美術館の表示はみえるけれど、印象的なものではない。また美術館に最初から行くことを目的とするヒトしか通りかかることのない場所にあるので、ショッピング客の目に触れず、一般に対しての宣伝効果を発揮しにくい。またエントランスのデザインが建物に埋もれてしまい、どこに入口があるのか、というより、どこが入口なのか認識しにくい。ガーデンシネマは表通りの三越横にあることで華やかな印象を与えるところとも、同じ敷地内とはいえやはり違いがみえてくるだろう。


やはり90年代にオープンした東京都現代美術館が、地下鉄開業で下町と地理的にアクセスすることで、面目躍如の変化をとげた?ことを考えよう。写真美術館の場合、立地的な利便性や街のブランド力の点では問題ない。あとは、ショッピング客や通勤客、周辺住人の動線をいかに美術館に向けるかだ。単純な発想としては、恵比寿駅のスカイウォークの出口から美術館を一体化させるアクセスを設定することだ。殺風景な通路にパーマネントのオブジェを設置するなどして、交差点から三越やガーデンシネマを目指して左側に歩きはじめるお客さんの視界を真っ直ぐ前方の美術館方向に向けさせる。さらにエントランスをもっと主張のあるデザインにかえることで、ガーデンプレースのヒトの流れの支流を創れないかな…。

現在開催中の展覧会は「コラージュとフォトモンタージュ」展と「球体写真二元論:細江英公の世界」展。フォトモンタージュ展ではマン・レイ奈良原一高の写真がよかったです。オモシロかったです。

【参考】
東京都写真美術館
wikipedia