大竹伸朗「全景」展:★★★★*

大竹伸朗「全景」@東京都現代美術館
【評価】4.75 /5(作品: 4.5/キュレーション: 5.0)

現代美術家として、ブックデザイナーとしても有名な大竹伸朗の大回顧展。いきなり高得点なのがくやしいところだけど、現代美術としては出色の展覧会。

まずはキュレーションの勝利である。つまり、自らの作品を手際よく収集、整理しつづけ魅力を最大に引き立てた大竹伸朗のキュレーション力だ。

大竹の幼少時(文人画「三年の思い出」、デッサン、自画像等)から、アメリカン・ポップなコラージュ、コミック、アフリカ旅行日記的な画面を経て、大画面の抽象画やオブジェ、CGなど現在の作品を網羅してみせる。

今回の展覧会の特徴は、なんといっても展示作品の数である。作品の数が半端ではないし、展示空間のヴォリュームが半端ではない。

そして、個々の作品のどんな些細なエレメントを拡大してみても、大竹作品の「確実さ」が浮かび上がってくる。もちろん、作品を堆積させる展示手法が、きわめて意識的に行われている。こうした大竹のエッセンスを浮かび上がらせるキュレーションが展示を成功させているし、魅力となっている。

エナメル仕上げの美しい大作「網膜」シリーズなど、単体として展示を成立させる作品も多々ある。しかし、80年代後半以降の大竹「確立」以後の作品だけが展示されたなら、センスのいい現代作家のひとり、という印象しか残さなかったかもしれない。

キュレーションよりアーティストのクリエイティビティを信じたいな、とやっぱり思った。