ビデオビヨリ

今日は完全オフ日に決め(毎日が休日である)、午前中に田植えをし、午後はビデオ三昧である。そういえば今年度に入ってから数ヶ月、映画もビデオも見てなかったなあ…と、2〜3時間さくのももったいないと、余裕のない日々を思い出すのである。体感知と客観知はこうもちがう。

蛇イチゴ[amazon](DVD)

明日から公開が始まる『ゆれる』の監督・西川美和の第1作品。。おもしろそうだけど、見過ごしていたままだったので、みた。宮迫博之つみきみほが出ている。若手監督の作品とは思えないほどしっかり芯が入って隅々までめくばりのいったできばえ。良作。配役も成功している気がする。ただ、タイトルになっている「蛇イチゴ」のとれる森を東京・多摩地域多摩都市モノレール沿線に設定したのはムリがあると思う。東京郊外のウスッペラな風景と子供時代の記憶を結びつけるなぞめいた森の風景があまりに異質すぎて、大人になった兄妹が「あの森に行ってみよう」とする展開はあまりに唐突すぎるし説得力をもたない。「森」を描きたいのであれば、ヘタに「開発」「変化」のニュアンスをもたせようとしないでも、崩壊途上の「ホーム」を過疎の山奥など森の中に設定したがうまくいくとおもう。それを考えれば、最新作はとても期待がもてる。

砂の器[amazon](DVD) [amazon](小説)
いわずと知れた松本清張名作『砂の器』の映画化。野村芳太郎は映画人としての環境が恵まれていた(父・野村芳亭は松竹蒲田撮影所理事・監督でニホン映画の立役者のひとり)だけで、監督としてはハッキリ言って才能ナイと思う。「傑作映画」!として名高いけど、小説の筋をタラタラと要領悪く、なおかつポイントを外して脚色・整理する、絵や編集で説明できなくなるとヤケクソ気味にテロップで解説、だいたい芳太郎映画ってカメラも編集も大味すぎて映画的リネア感ナシ…どこが名作なんだ…とウームとうなってしまうが、社会派テーマであることと、最後のなかせるシーンはさすがにうまい、のは確かだ。配役も、丹波哲郎森田健作はピッタリ、だが、孤高の天才音楽家に筋骨隆々とした加藤剛は不向きだ。もっと髪サラサラな繊細・青筋・音楽家のほうがワガサマ〜って感じで女性受けすると思う。個人的にはとても60年代的な前衛芸術家連、「ヌーヴォーグループ」を演じる役者がどんなメンバーなのかなあ、とか、殺人スピーカーってイッタイ…と期待してたのだけど、そういう面倒なところがことごとく省略されててチョットザンネン。泣かせれば客は喜ぶものね。

とはいえ、評価が確定している「名作」は批評の対象とはなりえないのかも。イチャモンつけても徒手空拳である。イヤイヤ、解釈は常に更新されることが望ましいのだ…。

ともかく小説の映画化というのは得てして難しい。特に『砂の器』は清張小説の中でも込み入っいて濃厚な小説だ(清張自身の父愛・母憎像が反映している)。芳太郎+清張コンビでうまくいった『張込み』[amazon] (DVD)は短編小説の映画化であったことを考えても、やはり映画の場合、ネタをシンプルにして映像で見せていくのが本道だと思う。それに、人気作家・松本清張の場合、長い小説はだいたい破綻してて、短編の方が全体的にクオリティが高いのだ。

ともかく「映画」として成功させるには、まずストーリーを語ることを諦めることが必要だろう。ことこまかに説明しなくとも、全体が浮かび上がるようなシンボリックな表現ができればいいのだと思う。

どうでもいいといえばどうでもいいのだけど。ノンビリすごせた一日だった。