実録日記・コルブの罠

070901

東京出発。2日間の徹夜明けの飛行機では爆睡…とはいかなかった。麒麟缶を飲みながらPCの電源が途切れるまでインド翻訳。終らない。夕食の赤ワインを半分開けたら眠ってしまい、気づいたら目の前の食事が片付けられていた。到着まで落語チャンネルを遠く聞いていた。



シャルル・ド・ゴール空港到着。敷地の果てのエクスティンションに下ろされる。薄暗い税関は収容所のような雰囲気。ポールでフランボワーズタルトを購入、4.5ユーロ、店員が目の前で箱を落とす。


空港タクシーで大学都市へ向かう。48ユーロ。敷地の中でウロウロ、運転手がみちゆくフランス人に建物の場所を聞いてもだれひとり分からない。最後に通りすがりの見た目日本人のオジサンに尋ねると、流暢なフランス語で案内してくれた。見当違いな場所にきていたことが分かる。ジャパンパワー。


ブラジル館。コルブの罠である。マルセイユ・ユニテ・ダビタシオンのミニチュア版。受付のオヤジを待ちながらロビーを入ると、この館の設計者であるルチオ・コスタと師匠のル・コルビュジエのパネルがありがたく掲げられていた。


受付のオヤジはオシャベリである。よく分からない早口のフランス語で、聞いていないことまで丁寧に教えてくれる。カードキーを渡され、あなたはなんて親切なのだ、オーヴォワー、と立ち去ろうとすると、そんなの当たり前さ、使い方は分かるか?日本人なら分かるな、センサーに入れて5秒待て、トイレに行くときでも必ず鍵だけは閉めろ、開けっ放しにするな、インターネットは1階にある、とにかく鍵だけは大事にしろ、とまくしたてられる。みんな寂しいのである。そして海外では日本人は誰もがエレクトリック・アニマルだと信じられている。


イタリアもフランスも、古い住宅の鍵はたいてい開けにくくて締まりにくくて、電化製品大国の日本人には非常に不便である。カードキーは大助かりだ。

居室のドアは黄色、紺色、水色、赤に塗り分けられている。わたしの部屋はくすんだ水色。紺色がよかったなあ。ロビーで会ったブラジリエンヌの女の子に、部屋は庭に面していたら当たり、道路側だったら外れ、夜中も往来でうるさいわよ〜、と言われていたけれど、まんまと道路側だった。


居室内部。マルセイユのユニテ・ダビタシオンのひとり部屋をひとまわり広くした感じ。シャワー付き。



ありがたく屋上庭園。波平の頭みたい。


実際は公団住宅のようだけれど、写真映えは不思議な程すばらしい。平面構成が美しいからかな。細かい粗雑さが原色の色彩の中で消失される。シャワーの扉はメタリックなアルミ版。なんでだろう。



これこそコルブの罠である。コルビュジエ・マジックで世界のデザインが変わったとするなら、それは媒介物としてのメディアの力だ。写真写りのよさって大事なのね、ということが歴史的に証明された瞬間である。


日本円に換算するとなんでもかんでも高額な気がしてきて気分が悪い。現実逃避をしようかな。[f:id: