「日本美術が笑う」★「笑い展」★★★

「日本美術が笑う」@森美術館
【評価】2/5
「笑い展」@森美術館
【評価】3/5


お正月からの井戸掘り作業が終わったので外に出た。暗闇から光に出ると眩惑におそわれた。


ニチゲイ。人材は工場から排出される。

東京と言っても城北地区は縁がない。池袋線の風景を珍しくながめ、池袋から丸の内線に乗り赤坂方面に出る。

井戸掘り後の欲望はトンカツで満たす。お肉がふっくらと甘くておいしい。


その後、ポンギー(死語?)に向けて歩く。

都市の真ん中でグロテスクに絡まる高速道が東京の顔。美しい街。露悪趣味は善か。


六本木ヒルズで「日本美術が笑う」展を見る。

建築展のように「作品」そのものを原理的に展示できない場合、作品研究や展示方法を含めたキュレーションのセンスと戦略が鍵となってくる。「美術展」であればやっぱり主役は「作品」だし、キュレーションはあくまで婢として「作品」をリスペクトし素晴しく見せようとする謙虚さが展示を成功させるための王道である。展示全体に漂うリスペクトしてない感が鼻についたし解釈が寒くて説得力がない。笑えないという客のクレームに対しては「笑ってくださいとは言ってません」というマニュアル語録までありそうだ。大御所美術館がキュレーター主導となっている世界的(というか欧米的)な動向を否定するわけではないけど、要はキュレーションのセンスが問われてくるわけで、現状分析なしに方法論だけ無批判に受け入れてもしかたない。頭がいいと自分だけが思いこんでて実はアホ的な、ヒトのことは言えない…自省的回路に気づかせてくれる他山の石的効用が本展の最大の価値である。せめて「笑え」と張り紙だけ張っておいて後は鑑賞者に解釈を任せる方式のほうが品がよいかなとも思う。

とはいえ、同じフロアで開催されている現代美術を扱う「笑い展」のほうは悪くなかった。なかでも会田誠と鳥光桃代は笑えた。とくに会田がビン・ラディン風に扮してこたつで日本酒をあおる「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」は本当は危機的なまでに命がけなんだけどアホらしいところが大好きだ。「笑い」は自らを虐げ他者を辱めて成立する。作品のためなら命を捨てる覚悟だって必要だし命がけだから笑えるのだ…なんてせめてひとりでいるときくらいは思ってみてもいい気がする。とかいってその他多くの作品は笑えないけど頑張ってる寒い感じが微笑ましかった。現代の美術表現にテーマ性の貧困というか現代美術無要論というか、だけど笑いがマーケティングと結びつくイマドキの現象。


東京はまぶしい。