「Skin+Bones」「アルヴァロ・シザの建築」

「Skin+Bones:1980年代以降の建築とファッション」@国立新美術館
「アルヴァロ・シザの建築」@ギャラリー間



もう一週間前になるけれど、乃木坂で2つの建築の展覧会をみた。


「Skin+Bones」展 は副題のとおり、1980年代以降の建築とファッションをテーマにした展覧会。MOCAで2006年11月〜2007年3月で開かれた同名の展覧会の巡回展である。建築とファッションは従来、その規模の違いのためにならべて議論される事が少なかった。しかし近年のコンピュータによる情報デザインの発達は、この二つのデザイン分野の形態や方法論などへの共通の関心を明らかにしているらしい。ということで観客は「両者の共通点を想像しながら」展示をみることになるのだけれど…。


個々の出展作は面白いし両者を結びつける展示全体の提案そのものも悪くはないと思う。ただ、やっぱり展示を見ると「建築とファッションは別物」という印象が強められてしまうのは、単にわたくしの想像力が不足しているだけなのだろうか。展示趣旨としては両者を結びつけて見てほしいのだろうし、それなばらキュレーションは観客の「想像力」に丸投げせずに「建築とファッション」の「つなぎ目」をキュレーションによりもう少しクリアにする必要があるのかな、という気がした。たとえば、おそらくデザイン的な観点からいえば、建築とファッションの共通点は作品そのものよりもむしろデザイン・プロセスにあるだろう。そうだとすれば、ドレスや建築模型というよくある展示キットを単純に並べるよりも、むしろ、たとえばA-POCの制作過程のCGとせんだいメディアテークの構造実験のCGをならべたりすれば、展示意図がもう少しクリアになるように思えた。


とはいえゲント市文化フォーラムの模型やマネキンの肢体にぴったりフィットしながら複雑なドレープで包みこむドレスのパターンなど、「かたち」の優美さにしばし見蕩れてしまった。特に、ふだん見慣れないパターンを眺めてると、布って可能性のある素材なんだなあ、と実感するも、ファッションと言いながら出展作が女性もののクチュールドレスにほぼ限られていたり、建築では、なぜチュミ…?などと、思わないでもなかったけど。ともかくキレイで面白かった。


帰りに乃木坂をグルリとまわってギャラ間のシザ展。ポルトガルのシザさんは親戚のオジサンみたいなフレンドリーな雰囲気だけど、お腹がでっぷり出ているのは知らなかった。顔だけ見ればピアノさんとも似ている気もする。インテリ南欧人。シザ伯父さんのスケッチが多く展示され、その優美な筆致にぐっときた。


ちなみにシザ伯父さんの出身地であるポルトガルの古都ポルトといえば、アペリティフでいただくポルトワイン(養命酒に似てる)で有名。ポルトに源流をおくドウロ川(全長897km)の周辺は葡萄の産地で、古くから豊かな文化を形成した地域である。


ポルトは映画史的には世界最長寿の巨匠、マノエル・デ・オリヴェイラ(1908年生まれ)の出身地でもある。大葡萄農園の息子として生まれながら軍事政権下で苦労したオリヴェイラポルトを舞台にいくつものフィルムを製作している。そのどれもに共通するのが、古都に特徴的な優美で貴族的な雰囲気と大河のような悠久の時間感覚だ。それは、シザ伯父さんやその建築にも共通する。オリヴェイラは老いても質の高い作品をコンスタントに作り続けられるのは、同じく南欧人のアントニオーニとの大きな違いだ。作家としてのキャパシティの違い、といえばそれまでだけれど。ともかく貧しい場所に文化は育たない、いまの東京は何か「文化」たりえるものを育てうるのだろうか、とも思わないでもない。